企業内イノベーションのリアルな現実

新製品企画のリアル

理系の就職活動において、企業の研究開発職というのは花形です。社会人になったら、色々な商品を作り出して世の中に広めていくぞ!と意気込むわけです。もちろん大学の同期からも羨望のまなざしで見られます。

しかし、研究職として入社しても、実務は既存商品の改良業務やクレーム対応が大半です。既存委託先との折衝や管理業務も多く、なんだかイノベーターというよりもオペレーターみたいですね。もちろん既存の巨大な売上を保つ・伸ばすためにも、これは大事なお仕事なんですが、研究職として働くからには「自分がいるからこそ作り出せた商品はこれだ!」といったものが作れる世界を夢みちゃいますよね。

私は持ち前の自己顕示欲と容量の良さで、とある機能性材料の企画提案が認められ、初期検討、機能性確認、製法開発、製品化、そしてブランディングまで携わりました。規制の問題から、新商品を作るのは不可能だといわれていた状況で、画期的な切り口で大ヒット商品にまで仕上げました。

開発がうまくいったのは、企画内容が巧みだったことにあります。過去の失敗例を分析し、社内情勢を見据え、どうやったら実施したい企画を社内で認めさせるのか、よく考えてから提案しました。また製法開発においては小さな技術革新も必要でした。

がむしゃらに行動していましたが、振り返ってみると、これが企業内イノベーションだったのかと思います。この経験をコンピテンシーとして再現性をもたせたいと考え、まとめてみました。具体的な事例は秘密なので、心がけが中心になります。

良い企画は牛丼みたいなもん

良い企画の基本条件は、安くて、早くて、美味い、です。つまり、開発コストが安く、開発期間が短く、儲かる、企画です。「そんなおいしい話があったら、他社が既に手掛けている」、みんなそういいます。でも大企業において企画担当者ってやる気ない方も多いんですね。どうせ企画が成功しなくても、失職するわけでもないし。企画するチャンスがきたら、無理と決めつけず、よく考えてみましょう。情熱があれば、画期的な切り口はみつかるものですよ。

売れるか 勝てるか 儲かるか

いろいろなビジネス書で書かれている、事業の成功要件です。私は時吉康範さんの資料で初めてみました。決裁者(部門長であることが多い)があなたの企画を聞いたときにが、売れそう!、勝てそう!、儲かりそう!と思わないといけません。

評価はベクトル性

私の勝手な考えですが、組織の評価はベクトル性をもつと解釈しています。ベクトル性とは、「向き」と「大きさ」から成ることを意味しています。「向き」とは会社の向かいたい方向性、「大きさ」とは質とか量とか。

いくら残業しても綺麗な資料でも、めっちゃ儲かっても、評価されない人・プロジェクトがあるじゃないですか。これって「質と量」が大きくても、あるべき「方向性」から外れてるってことなのかな。ざっくり言うと「ズレてる」というやつです。だから会社や部門が向かうべき方向と自分の仕事の方向をキッチリ合わせましょう。

たとえ儲からなかった企画でも方向性が合っていれば、ナイスチャレンジ!で終わります。方向性がずれてるのに儲かってしまうと、良いところでプロジェクトを外されます。

意思決定者ファースト

新規事業企画の場合、最も重要なお客様は意思決定者(キーマン・裁決者・上司)になります。ここはサラリーマンなので仕方ない。

過去の会議資料、議事録を手に入れて、意思決定者の発言を整理します。志向(拙速を好むのか、クオリティを好むのかなど)も押さえておこう。企画会議の意思決定者と会い、早いうちに方向性を確認しよう。たぶん、常識的にこっち方面でしょ!と解釈して進むと、高確率で外れます。

だから資料は10%(つまりドラフト)ができた時点で相談にいく。すれ違う機会を作ってでも確認しよう。初期段階なら角度修正が間に合う。締切日に上司がチェックし、大幅手戻りで急きょ徹夜、なんて例はゴマンとみてきました。夜も仕事すると少し興奮するけれど、ビジネスマンとしてダメダメ。また上司が催促してきたら、時間オーバーで負けの意味です。

大人の嘘

企画とは、あなたやりたいことを提案する機会ではありません。会社がやりたいことを、一般社員のお前が代弁して提案させていただける機会です。

企画内容はなんでも良いと言われても、それは「大人の嘘」だから勘違いしちゃいけません。実はラーメンを食べたい上司が何でも良いよーといっても、高級フレンチを出すと食べてもらえません。素晴らしい食材なのに何故?!と反抗しても、気分が乗らないだけなんです。ここですれ違ってしまうと、会社(上司)はダメだ、分かってない!なんて思っちゃいます。まぁダメかもしれないけど、ラーメン出しときましょう。

個人的に実施したいことは、実績を持ったあとで提案しよう。意思決定者が自分で上げた企画は、どんなに稚拙でも通るから。実績を集めて、自分が意思決定者になりましょう。

制約条件を取っ払う

これは既存のシステムを出し抜く、私なりの「ハック」の方法です。

新規事業に参入ということは、多くの場合は戦場へ最後尾から突入することを意味しています。ということは、他社にはない、とっておきの秘密兵器がないと勝ち目がないということです。

まずプロジェクトのゴールに関する制約の情報を集めます。そしてこれらの制約は、必ず守るべきものか、慣習であるものか区別します。慣習を取り払うと、誰もが考えつかなかった切り口を思いつきます。なーんだ、こうやったら簡単じゃん、と気がつくのは大体このパターンでした。

情勢を見極める

情勢により企画の方向性を変えた方が良い場合があります。例えば、予算達成のため短期間に小銭を儲けたい時期、株主総会受けのため期間をかけても大きく儲けるストーリーが欲しい時期、部門同士の仲が悪いと言われてるので連携テーマが欲しい時期、流行ってる分野に絡みたい、などなど。場合によってはお蔵入りというのもぜんぜんあり。

社内情勢を掴むために、みんなと仲良くしましょう。アクセス可能な資料は全てチェック。

セオリーは守る

過去に通った企画のセオリーを真似しよう。既存品置き換え型企画であったら、プレゼンのセオリーは、既存製品の紹介→問題はコレ→解決策候補一覧→これが丁度いいかも→自社に足りない技術はコレ→課題はコレ。

王道から外れたセオリーでは、格段に難易度があがる。というか非管理職のあなたには無理だから。

地雷は避ける

普段から地雷情報を集めて、メモしておこう。

赤字や白抜きがNGなど独自ルールがある場合も。また発表や企画書にテンプレートがある場合は、ダサくても従うこと。下手にフォントや色をいじると、印象が悪くなってしまう。

問題を解決、課題を遂行、といったビジネス用語も間違えないように。

信念をみせる

絶対に企画を通す!の信念を持つこと。ダメかもなーという姿勢では、良いアイディアは浮かびません。やらされた仕事だから、という考えではしょぼい企画しかでてこない。

自分が最後の砦だ!と心に決めて行動しよう。そしたら、恥ずかしいとか、悪いなぁとかいった気持ちが関係なくなる。プロジェクトを前に進められるのは自分しかいません。

コンサル的なフレームワークもありますが、結局はヒトの情熱が企画の成功を左右します。企画を通したら、自身で開発を進め、離さないこと。企画者としての熱意がないと、産みの苦しみに耐えられません。

まとめ

数年かけて思い知った、企画提案の現実をまとめました。

ヒット商品を立案した方や新事業を作り上げた方も、やはり同じような苦労を味わっています。

要は、組織の現実(ルール)をよく理解して頑張れってことです。

参考になった文献

色々なイノベーションの文献を読んだが、何度も読み返しているのはこちら。

古典だが、先行他社を出し抜くストーリーには勇気づけられた。

ベンチャーキャピタリストによる成功するスタートアップの法則の解説。大企業内の新規事業従事者には大変参考になるだろう。

私は、出身研究室の先生に憧れています。いや、憧れているというよりも嫉妬に近いです。とある商品において、その先生が第一人者なんですね。商品=その先生、と紐づいているのが羨ましく思いました。自分もいつか、そんな第一人者になってやるぞ、と思っていました。

夢叶ったり。

以上

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